ごあいさつ

第20回 日本在宅ホスピス協会全国大会開催にあたって

謹啓 皆様におかれましてはますますご清栄のことお慶び申し上げます。
この度、第20回日本在宅ホスピス協会全国大会 in 多摩を2017年9月22日(金)〜24日(日)に東京都立川市にて開催させていただくことになりました。大変光栄なことと存じております。日本在宅ホスピス協会は1997年11月に「在宅ホスピスの基準」を作成しています。その精神は以下の通りです。

在宅ホスピスの基準とは

「ホスピスケアは余命が限られた不治の患者が身体的・心理的・社会的・霊的苦痛から解放され、残された日々を人間としての尊厳を保ちながら、心身ともに安楽に過ごすことができるようにするためのケアである。それは、いかなる場所においても統一した理念のもとに、継続した形で実施されることが望ましい。 在宅ホスピスケアとは、患者の生活の場である“家”において実施されるホスピスケアのことをいう。」
この呼びかけに賛同した日本全国の医師、看護師を中心とした人々が地域で在宅ホスピスケア活動を日々続けています。日本在宅ホスピス協会全国大会は1998年に第1回全国大会が宮崎県で開催されました。

2015年10月に第18回大会が奄美大島で、2016年9月に第19回大会が宮城県大崎市で、そして2017年9月に第20回大会が東京都立川市での開催となりました。日本は超高齢化多死時代を迎え、「地域包括ケアシステム」が導入され、在宅医療、訪問看護、訪問介護の重要性が増し、医療介護の連携、在宅看取りが叫ばれている時でもあり多くの医療介護関係者が集まりました。

私が在宅ホスピスを始めた切っ掛けは開業医であった父の肝臓癌による死です。阪神淡路大震災の直前に自分が若い時を過ごした熊本の病院の一室で闘病数か月で寂しく旅立ちました。お粗末な緩和ケア、死に場所を選べない国に憤慨し、ホスピスを建てることを夢に日本、アメリカの実情を見て歩きました。
 

 
立川市で建設に90%までこぎ着けましたが地主の「先生、やっぱり、そこは人の死ぬ場所なんだよね…親戚が…」という言葉で中止になりました。どうしようかと悩んでいる時、厚生労働省の「余命6か月の末期癌になった時に何を望みますか?」とのアンケートが目に留まりました。「緩和ケアを受け最期を自宅で迎えたい」と60%を超える人が答えていました。「これだ!」在宅ホスピスを始めることを決意し、2000年2月に立川市に24時間・365日対応の在宅ホスピスケア専門の診療所を開業しました。

開業した当時には施設ホスピスは多摩に5か所、都内に4カ所、熊本には1ヶ所だけでした。まだがん対策基本法もなく、がん診療拠点病院、緩和ケアチームもありませんでした。2000年4月に介護保険がスタートし訪問診療、訪問看護が重要になってきたことは追い風でした。しかし、緩和ケア、在宅ホスピス、在宅看取りに対する意識は病院医療者、医師会、住民、行政などすべてで低い状況でした。地元の訪問看護、ケアマネ、訪問介護などの多職種連携を重視した「多摩在宅ケアネットワーク」、緩和医療に従事する医療者のための緩和ケア教育「多摩緩和ケア実践塾」、緩和ケア医療従事者の連携「多摩緩和ケアネットワーク」を開催してきました。また市民講演会、病院医療者への講演会や研修会、出版、学会活動、テレビ、新聞、雑誌の取材を通して啓蒙啓発に努めてきました。その甲斐あって今では連携する訪問看護ST、ケアマネ、訪問介護、調剤薬局、訪問入浴などの事業所は200か所を超え、在宅・施設で看取った患者さんは3000人を超えました。在宅看取りの86%はがん患者さんです。
今では日本全国に在宅ホスピスケア・在宅看取りの輪が広がりつつありますが、地方と都会の事情はまったく違うようです。2000年以降徐々に在宅死亡率が増えて来ており、その理由は在宅医療が普及してきたためであると思っていました。昨年当院で調査した結果、隣人の顔は知らない、お節介おばちゃんの少ない東京立川市では2014年自宅死亡数288例のうち155例が警察扱いの検案事例であることが判明しました。2012年、多摩6市ではさらに多く自宅死亡数943例のうち452例が検案事例であることが明らかとなりました。団塊世代が後期高齢者となる2025年以降の死亡数の増加は明らかで年間の総死亡数160万人と推定されています。その対策として医療介護の連携で最期まで地域で支え、看取るために「地域包括ケアシステム」が導入されました。がん難民、看取り難民、孤独死を少しでも減らすためにも在宅ホスピス、在宅看取りの普及が必要です。そのためには現状の認識とその対策が急務です。

第20回日本在宅ホスピスケア協会全国大会in多摩を東京都立川市で開く機会を得て、在宅ホスピスケアの普及に少しでも貢献できれば幸いであると考えている次第です。皆様方のご理解とお力添えを何卒よろしくお願いいたします。
謹白
2017年春
第20回日本在宅ホスピス協会全国大会in多摩
大会長 井尾和雄
立川在宅ケアクリニック